井元です。
前回は「人工知能」という単語の意味と、人工知能を実現するための手段「人間の知能の一部を模倣させようとする技術」の一覧を紹介しました。
今回は「人間の知能の一部を模倣させようとする技術」の中から「推論」をピックアップして書いてみたいと思います。
推論とは?
まずは、推論とは何か?これについて書いてみます。
推論とは、利用可能な情報から規則や過去事例に基づいて、結論や新しい情報を導く思考過程です(例えば、ある難しい問題を解く等)。
さて、推論は結論や新しい情報を与えられた情報から導き出す過程のことだと書きましたが、その導き出す方法には幾つか種類があります。その種類を幾つか紹介して行きたいと思います。
演繹法
演繹法は複数の前提から結論を導き出す推論です。
例えば以下のような形式がそれにあたります。
大前提「体温が高い(熱がある)」
小前提「咳がでている」
結論 「ゆえに風邪である」
結論は必然的に導き出され、諸前提の妥当性に照らして判断することができます。
ほかに演繹推理には幾つか種類があります。
仮言的三段論法(もしPならばQである。Pである。ゆえにQである)、や線形三段論法(AはBよりも高い。BはCよりも高い。ゆえにAはCよりも高い)などの形式がそれにあたります。
結論の妥当性を判断するには命題内容を記号P、Qに置き換えたり,真理表,オイラー円図,ベン図を書いて参照するなどの認知的道具の利用が有効であるようです。
このような背景から、記号処理プログラムを書いてコンピュータでシミュレートすることも有効であるとされ、昔から行われてきました。
帰納法
帰納法は,複数の特殊な事実から一般的、普遍的法則性を導き出す推論です。
例えば、帰納推論の一種類であるカテゴリ帰納法は以下のような形式で表されます。
「イルカは恒温動物」(前提)
「人間も恒温動物」(前提)
「ゆえに哺乳類は恒温動物である」(結論)
ここで、前提事例が増えれば結論の精度や確信度は増します。
このように、カテゴリ帰納法はあるカテゴリの少数事例の観察に基づいてその特徴を一般化します。
また、データ群から数式や構造を導きだすことや、病気の診断、類推も帰納推論に含まれます。
これらの帰納推論の共通点として「事例獲得」、「仮説の形成」、「仮説の検証」といった工程があります。
以上が、推論の主な意味とその種類になります。
次は、この推論を使う簡単な例を紹介します。
推論が使われる例
推論の一例として,コンピュータが相手をするゲームの対戦について述べます。
ここでは、多くの方がご存じの「オセロ」というゲームをする人工知能を取り扱います。
このゲームのルールはを簡単にまとめると、
盤上の8×8のマス目にコマを交互に置く。
コマは片面黒で片面白で,一方の選手が黒,もう一方が白を受け持つ。
自分のコマで相手のコマを挟むと,相手のコマを自分のコマにできる。
コマをおけるのは,相手のコマを挟むことのできるところのみ。
お互いにコマを置けなくなったら終了。
自分の色のコマの多い方が勝ち。
人工知能はこれらのルールを知っているだけです。
推論は「利用可能な情報(知識)をもとに,新しい結果を得ること」と書きましたが、これらのルールがその知識にあたります。
また、盤上のコマの状態もここでは知識として考えます。
人工知能は、これらの知識から「相手のコマをたくさん挟めば,自分の勝ちである」といった新しい結果を導きます。
この結果に基づいて「相手のコマを多く挟める」ところにコマをおいたとします。
ところが、相手は自分の番のときにより多く相手のコマを挟める場所にコマを置きました。
すると、人工知能はたくさんのコマをとられてしまいましたので、人工知能に「相手は次の自分の番のときに、たくさん挟める場所に置く」という知識を加えてあげます。
すると、新しい知識も考慮して、人工知能は新たな結果「たくさん挟めるが,次の相手の番のときに、相手が少ししか挟めない場所にコマを置く」といった新しい結果を導くことができます
このように、手順を全部指示しなくても知識(情報)のところをいろいろ変えることで、目標を達成するために必要な事柄を導き出せることが重要な点です。
1997年にチェスの世界チャンピオンと対戦したコンピュータも基本的にはこのような枠組みで動いています。
このように、推論は基本的な技術としていろいろと応用されています。
最後に
このように、推論を用いた人工知能は多くの情報から新しい結論を導きだすことができます。
自立行動を取る為には必須の「人間の知識の一部を模倣させようとする」技術の一つでしょう。
次回は、また別の技術を紹介したいと思います。